ノゾムモノ。〜ちぇりーぶろっさむ〜4章

・・・登場人物・・・
木凪 有(きなぎ たもつ)
主人公。特に将来の夢もこれと言った希望も無い普通の高校生。落ち着いておとなしい性格ではあるが自分の意見はハッキリと主張する。

桜観 風花(おうみ ふうか)
ヒロイン。どこにでもいる純情乙女。容姿○性格○の生徒のアイドル的存在。有の事を知っていたようだが何か関係が…?

木見野 幼染菜(きみの よしな)
主人公の幼馴染。やたら元気な人。どこにでも一人は居る、取り合えず一番前に立つ先導力や統率力に優れた子。主人公の相談にもちょくちょくのってるらしい。

神崎 伶(かんざき れい)
脇役。変な喋りで友達付き合いが良い。でも名はあるけど呼ばれない、とりあえずムードメーカー的に一人は居る。そんな感じの不憫な役柄の人。

ナレ
読んで字のごとく。ナレーション




 君があの日見つけた、かけがえのない想い。

     俺の中で芽生えた、彼女へのかけがえのない想い。

       もう交わされることのない―――――俺と彼女の想い。


ナレ 有の前から風花が消え、時は経ち―――高校生活に終わりを告げる、三月。

 …。

幼染菜 ゆーくん凄いねっ!大学スゲェ良いトコ行けたじゃん♪

 あぁ…。

 どうしたんだ?夏からずっとその調子…卒業のときぐらい笑おうぜ。

 …ごめん。

幼染菜 なに謝ってんのさっ。
      私達祝福するみたいにこんなに桜も綺麗なんだしさっ!ほら、すまいるー♪

 …一人にしてくれないか。

幼染菜 …有さ、何か悩んでるなら相談しようよ…。
      私幼馴染だし…伶だって友達だよ。有がそんなだと…私も寂しいよ…。

 ―――お前らに何がわかる?

幼染菜 え?

 8月何をしたか言ってみろ、誰と…海に行ったか言ってみろっ!

 …俺とお前と幼染菜さんの三人だろ。

幼染菜 有…?

 …くそっ!

ナレ 有は二人を突き飛ばし、走って行った

 (畜生…、何で誰も風花の事…覚えてねぇんだよ…っ)

ナレ 有はあの日風花と出会った、校庭の桜の下に来ていた

 なぁ風花…あの時みたいにさ、桜の花びらの中から出てきて俺を驚かせてくれよ…。
   最後お前言ったよな、もう思い残すことは無い―――って。
   でも、俺も思い残すことが無いわけじゃないだろ…
   まだ―――お前と二人っきりでデートもしてないし、好きだって言葉すら…
   言ってねぇんだぞっ!

ナレ 有は桜の幹に思い切り拳を叩き付けた。

風花 (…ごめんなさい。)

 ぇ?

風花 …久しぶり、有くん。

 風花っ!!

風花 来ちゃ駄目っ!!!

 …!?

風花 今触られると、もう…崩れちゃうから…。

 風花…お前は何、なんだ?

風花 この桜の木…って言えばいいかな。
    でね、最後にその桜の木のお話を聞いて欲しいの。

 …。

風花 その桜の木は人間が大好きなの。
    七年前のある日、その桜は人間のように遊んでみたくて公園に出かけてみた。
    でも転んじゃって、泣いてたの。
    その姿を見て、声を掛けてくれた、優しい男の子がいたの。
    その男の子は初めて会う女の子と日が暮れるまで一緒に遊んで、そして別れた。
    この女の子は遊ぶ事が出来てとても満足だった。
    でもこの物語はここでは終わらなかった。
    今から三年前…その男の子とまた会うことが出来た。
    でもまた会うのは恥ずかしい、相手も自分の事なんて忘れている…
    二年間悩んで、三年目、ついにまたその男の子に会う決心がついた、
    でもそれは同時にその桜にとっても最後の時だった。
    その桜の木は次に花を咲かせたらもう枯れてしまうから…。

 風花―――。

風花 それでも、その男の子が大好きだから。
    自分に優しさを教えてくれたその人にお礼も言いたかったから。
    その身を削いで男の子と一緒に少しの間、過ごしました。
    でもそれは夏まで…、唐突に別れを告げる事になったの。
    そして今…最後の刻を男の子の為に、使っています。
    はい、物語はここでおしまい。

 …あとどれくらいなんだ。

風花 …5分、かな。あとは桜の花びらが散っていって、それでこの木の役目は終わり。

 最後なのか。

風花 …うん。

 言っておかなくちゃいけないことがある、聞いてくれるか?

風花 …うん。

 ずっと言えないでいたけど…
   風花、愛してる。出会ってから数ヶ月だったけど
   お前は俺にとってかけがえの無い存在になってた。
   俺なんかのために…ありがとう。

風花 私の方こそ…ありがとうございました。

 ごめんな…デートにも連れてってやれないで…。

風花 んーん。私の方こそ彼女っぽい事してあげられなくてごめんね…。

 …。

風花 そろそろ、時間みたい。

 どうにも…ならないのか

風花 ごめん…

 俺は…お前の事絶対に忘れないからな。

風花 有くん…私も、ずっと、ずっと―――――

 …風花?

風花(…ばいばい)

 風花ッ!!!!!!


―――――Fin.