『別れの日...』

青年:病床に伏せる若い青年
少女:青年に想いを寄せている(実は黒猫だったりw)
ナレ:ごく普通のナレーション



ナレ 病床に伏せっている一人の若い青年。温かそうな窓の外を虚ろに見ている。
そこに「女性」というにはまだ行かない少女が悲しいような切ない表情で近づいてきた。
少女 翔輝(しょうき)…
青年 …お前と暮らし始めて、どのくらい経つかな?
ナレ ベットの上にちょこんと座る彼女をチラッと見ては、また外を見つめつぶやくように青年は言った。
青年 初め… お前は、人を寄せ付けないようにしていたよな…
少女 そうね… あの頃は、人を信じられなかったから。
ナレ 思い出を語り始める青年に、少女は苦笑気味に答えた。
青年 今では、とても優しい目をしてる…
ナレ 青年は少女を優しく見つめた。
少女は少し照れてみせた。
少女 きっと、翔輝(しょうき)の優しさが移ったのよ。
青年 昔から可愛いかったが… もっと可愛くなったな。
少女 そんなことないよ? 今でも私は嫌われ者だし。
ナレ 少女の黒い瞳に淋しさが濃く現れた。
フッとため息をつくように笑う青年。彼女は苦笑した。
青年 今まで、本当にお前に癒されてきたよ。
辛いことがあったって、お前が居たから頑張ってこれた。
少女 そんな…これが最期みたいなこと言わないで!
まだまだこれからも私と一緒に時を過ごしてくれるんでしょ?
青年 くふっ…
ナレ 苦しそうな彼を心配そうに見つめる少女。
そのまなざしに気づいた青年は笑って見せるが、苦しさは消しきれなかった。
青年 ごめんな…お前にこんな…ケホッ…こんな姿見せたくなかったのに…
少女 いやっ。やめてっ。もう、それ以上言わないで!
ナレ 青年は少女の頭を優しくなでる。
青年 もう、こんなところにいなくていいよ。
ここにいても、何もない。さぁ、お行き…
お前の好きなところに行くんだ。
少女 何もないだなんて、そんなことないっ!
ここには翔輝(しょうき)がいる。それだけで私は十分。
淋しいこと…私を突き放すようなこと言わないで
ナレ 彼女を優しくなでる手が次第に動かなくなってゆき、青年の目から光が消えていく。
青年 今まで、ありがとう…最後まで傍にいてやれなくて…ごめんな…
大好きだよ… 僕の…かわいい…相棒…
少女 にゃぁ…? にゃぉ…? にゃ〜…
ナレ 彼女の哀しく切ない問い掛けに、青年が応えることは…二度となかった。